Retro Rod&Reelの高級バージョンリールと言えば花梨のフェイスプレートを持つ花梨モデルです。
ステンレスのフレームを持つシルバータイプとブラスフレームのゴールドタイプ
最近はこの2つの高級モデルが人気のようです。
花梨のフェイスプレートは、コーティングした後に外径サイズを調整するために旋盤に取り付けて外径加工を行なうとコーティングが剥離してしまうので、外形加工を行なった後にコーティングを行っております。
コーティング工程は、非常にシンプルで、花梨のフェイスプレートにコーティングして、乾燥させ、研磨を行うだけなんですが、これが中々奥が深いのです。
花梨材だけではなく、すべての木材に言えることなのですが、木材にウレタンをコーティングすると染み込む部位と染み込まない部位とがあります。また、研磨した木材の表面もミクロで見ると凹凸があります。
この細かな凹凸によりコーティングが鏡面にはならず、凹凸を反映した状態になってしまうのです。
なので、表面にコーティングを行い、研磨して、またコーティングして、研磨してを繰り返して、表面の凹部分を少しずつウレタン樹脂で埋めていくような作業が必要です。
コーティングの乾燥は12時間程度かかるので1日2回ほどしかコーティングできず、10回コーティングすると5日ほどかかる計算になります。
研磨も難しいのです。
荒く研磨すると花梨の下地まで研磨してしまうので、細かな番手のサンドペーパーで研磨する必要があるのです。
コーティングした状態のままで鏡面が得られれば良いのですが、ダストの付着、気泡の付着、コーティングの波打ち等々、色んな状態になることがあります。
なので、最終的には研磨で鏡面を出すようにしています。
この鏡面研磨はエボナイトの鏡面と同様に非常に難しい研磨になります。
番手で言うと30000番程度の研磨を行う必要で、途中に深いキズがあるとやり直しとなり、荒い番手で研磨をやり直そうとすると、下地の花梨が露出して、初めからやり直しになったりして......。
この苦労を繰り返してやっと完成するモノなのです。
私が作製しているリール達は色んな部分が研磨されているんですが、この研磨と言うのが曲者です。
終わりが見えないのです。
もっときれいに研磨しようと思えば際限なく研磨できてしまうものなので、どこかで終わりを見つけないといけません。
この終わり時は熟練すればするほどその終わり時のハードルは高くなり、熟練しても一向に時間短縮と言うものができない世界なのです。
バンブーロッドビルディングで言えば、曲がり直し作業に似ていると思います。
熟練するとちょっとの曲がりが気になり、一向に曲がり直しが終わらなくなるのです。
高価なリールですが、時間換算すると通常のリールよりも多くのお時間を費やしていると思います。
携わっている時間が長いとやはり情が移るというか、加工していて楽しいと感じることが多々あります。
今回のご依頼は、ブラスフレームに花梨のフェイスプレート
左巻き仕様で、フェイスプレートと同材の花梨でノブを加工
フットはブラスのリブフットの仕様となっています。
S字ハンドルは洋白です。
ここで言う洋白は快削洋白ではなく、洋白なのです。
快削洋白ではないということは、加工性が悪いのです。快削ではないのです。
ですが、重厚で綺麗なんです。
他の材料にすれば安価で加工しやすい材料をチョイスすることも出来るのですが、
このハンドル材料は洋白に拘りたいところでもあります。
ピラーは快削洋白を使用しています。
通常、ピラー等はアルミで加工しているリールが多いと思いますが、やはりここも研磨後の輝きはアルミとは比較になりません。
フレームの研磨の状態、フェイスプレートの研磨状態、どれをとっても他のリールよりも丁寧に研磨することに拘り続けています。
価格的にはもっともっと安価なリールが世に中にはありますが、私は手を掛ける時間を惜しまないこのリールの作り方が自分に向いていると思っています。
決して安いリールではありません。
どちらかと言えば高価な部類のリールとして分類されるかもしれませんが、それには理由があるのです。
今日も研磨の日々を過ごしています。