Tiemcoのリール「ORACLE Ⅳ」の修理依頼がありました。
これはTwitter経由で依頼を受けたものです。
最初はリールの修理ができますか?という問い合わせから始まったのですが、
写真を確認してもイマイチ理解できなかったので、リールを送付いただきました。
ドラグ調整ダイヤル部分のネジが折れ込んでいる状態で、折れ込んでいる部分を確認すると、左ネジのようです。
まずはネジを抜く必要があるので、折れ込んでるネジ部分にセンタードリルでセンター穴を開け、φ2.1mmのドリル穴を開けました。
そこにM2.5用のタップ加工を行なうために、タップをねじ込んでいると、左ネジなので、ネジが緩んで抜くことができました。
この修理で一番大変なことはこのネジを抜くことであり、これが終われば後は壊れたネジを採寸して、図面化、NCプログラムに変換して加工するのみです。
ネジ外径がφ13.4mmあるので、φ15mmの丸棒から加工していきます。
ネジ部分の外径加工を行ない、左ネジ用のダイスでM3の左ネジをネジ切りしていきます。
ネジ切りが終わると突っ切り加工を行ない、ネジの頭部分のR加工を行ない、スリワリ加工を行い、研磨すれば完成です。
左ネジ用のダイスは持っていなかったので、急遽ダイスを購入し、対応しました。
ねじ切り加工もできるんですが、良く使いサイズはダイスがあったほうが便利です。
ネジ頭のスリワリ加工はダイヤモンドカッターをフライス盤に取り付けて加工を行なっています。
効率が悪く、時間が掛かる作業でした。
ネジ頭がφ13.4mmあり、スリワリの溝幅が約1mm程度あるので、ダイヤモンドカッターで一度加工して、更に溝幅を広げるように追加加工しました。
切り込み深さも0.05mm程度で1mm深さのスリワリ加工を行なうと、トータル40回の切り込み加工を行なう必要があります。
プログラムを作成する程でもないのでマニュアル加工しましたが、結構時間が掛かります。
折れ込んだネジの除去加工、採寸、図面作成、プログラム作成、加工、ダイス加工、突っ切り、ネジ頭加工、スリワリ加工、研磨
以上の工程を考えると、半日仕事になってしまいます。
半日仕事だから半日分の手間賃を請求したとすれば、加工の依頼はしないと思います。
そこが難しい所なんです。
加工見積もり依頼の時点で、すべての工程を把握できるわけでなない事と、時間分の費用を請求できない事
言い換えれば、修理の仕事ばかりを行い続ければ、破産してしまうのです。
今回の修理費用は送料込みで2610円
送料530円なので実質2080円です。
半日の費用としては破格です。
なぜ、そこまでして修理を請け負うのか!
理由は2つ
1つ目は、Retro Rod&Reelの加工技術を幅広く知ってもらうための宣伝活動と言う位置づけ。
CM活動なので、修理で儲けようと考えてはいけないのです。
2つ目は、このリールを修理しなければ、使われることなく、いづれは捨てられるかもしれない事。
修理さえすれば使用できるのであれば修理したい。
SDGsも少し意識した行動でもあります。
フライフィッシングでもお困りごとには何とか対応していきたいと考えています。
この先ずっと楽しいフライフィッシングができるように何かお手伝いが出来れば本望です。