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バンブーロッドビルディング-その2

荒削りまで終了した竹辺をバインディングして火入れを行いました。

火入れは各ロッドビルダーのノウハウの塊みたいなプロセスで、一番のブラックボックスのような工程です。

 

私はビルディングを始めた1999年に火入れがビルディングプロセスを大きく左右すると考え、このプロセスを安定させることが重要だろうと考えて火入れ装置と言うほどではありませんが、ヒーターを作製いたしました。

 

かなり以前にこのブログでも紹介したことがあると思うんですが、5mのリボンヒーターをアルミのロッドケースの外周に巻き付けて、断熱材で囲んで、ステンレスの煙突パイプに入れたものです。

 

当時私が考えていたことは、ヒーターをロッドケース内に配置するとヒーターに面してるブランクと面していいないブランクとで温度差が生じると考え、ヒーターの熱を直接ブランクに伝える方式ではなく、間接的に熱を加える方式の方が良いだろうと考えていました。

 

電源を入れると約10分で165℃程度に昇温され、この状態で5分程度温度を安定させた後にブランクを投入して、一定時間後にブランクを入れ替えて火入れを行っています。

 

トンキンの場合は今までの蓄積で火入れのレシピは完成しています。

火入れ時に竹から出てくる蒸気が甘い香りがして、なかなかいい匂いがしてきます。

 

このヒーターは断熱材で囲っているので、火入れ中でもステンレスの煙突パイプ表面は50℃程度の温度であること、リボンヒーターを使用しており、部分的な温度勾配が少ない事、火入れ中に騒音がない事が良い点で、夜中でも火入れが可能です。

 

温度管理は、ロッドケース内に熱電対を入れて温度をモニターしています。

また、ロッドケース内にはアルミの板を入れて、ブランクがトッドケース内の中央付近に位置するように配慮推しています。

 

火入れ時はブランク径によって火入れ速度が変わってくると思いますので、TipとButtは同一テーパーにした状態で火入れを行い、火入れ状態を安定させております。

火入れ後は、スクレッピング工程で、竹表面のエナメル質を除去する工程です。

スクレパープレーン等も販売されていますが、私は平やすり一本でこの工程をやっています。

硬いエナメル部分は平やすりのエッジ部分でガリガリと削り、表面のパワーファイバーが見えてきたら平な部分で表面を削ります。

この工程では、曲がり直し時の丁寧さがスクレッピング作業の楽さにつながります。

特に竹の厚み方向のお曲がり直しの丁寧さが重要です。

 

スクレッピング後に仕上げ削りを行うので、仕上げ削り終了時点でのブランク幅で綺麗にエナメル層が除去できていればよいので、スクレッピング工程ではブランクの両端部分に若干エナメル質が残っていっても問題ありません。

むしろ残っている位の方がパワーファイバーを削り取っていない状態なので、望ましいと考えています。

 

スクレッピングが終了すれば、プレーニングフォームを最終テーパーにセッティングして仕上げ削りするわけなんですが、ここでは、プレーンの刃が良く切れる状態を維持することに注意をしておけば、後はプレーニングフォームに従って削るだけです。

 

曲がり直しや、スクレッピングが上手くいっていれば、仕上げ削り時には切りくずが全部つながった状態でスルスルとプレーンから出てくる様は気持ちのいいものです。

 

仕上げ削り後は、ブランクを六角形に束ねて、マスキングテープで留めていきます。

この時に注意するのは、各ブランクのパワーファイバーが外に向いていることを確認します。

 

マスキングテープに一部をデザインナイフ等で開いて、正三角形に仕上げ削りした頂点を数回、仕上げ削り用プレーンを走らせて頂点を少し削ります。

これは、頂点部分に接着剤を溜めて強度を増すという人もいますが、私はの考えは接着剤のたまりを作るためではなく、頂点を削ることで、頂点同士が接触して正しい六角形を形成できない状態を回避するためだと考えています。

 

ブランクを接着する接着剤は硬化するとカチカチになります。

分厚い接着剤のある領域が存在すると、キャスティングやロッドが曲がる際にカチカチの接着剤部が割れて、その勢いでブランクが割れることがあると思われます。

曲がりを阻害する接着剤は極力少なくすることが肝要です。

 

さて、頂点部分を除去したヒラキ状態のブランクですが、ここでひと手間かけます。

マスキングテープをすべて外して、各竹辺を刷毛等でゴミの除去を行ないます。

それから、再度ブランクを六角形に束ねて、マスキングテープで留めていきます。

この時に注意するのは、各ブランクのパワーファイバーが外に向いていることを確認します。

また、スタッガリング状態を確認して、間違いがない事を確認しておきます。

 

頂点部分を削る際に削りカスが開いた状態の溝部分についてしまい、この状態で接着剤を塗布してバインディングしてしまうと、硬化後に一部ブランクの接着剤の厚みの厚い部分があったり、場合によっては隙間が空いた状態になる場合もあります。

 

接着後にその状態を見つけてしまった時の落胆ぶりと言ったら......。

それを防ぐためには手間ですが、一度マスキングを剥がして、クリーニングすることを強くお勧めいたします。

 

接着に関しては、兎に角段取りを確認して、準備万端状態にしてから接着剤を混合することです。

また、接着後は濡れ雑巾や濡れスポンジで余分な接着剤を擦って除去します。

この接着剤を綺麗に除去すると後工程が楽です。

 

接着後は丸2日程度は乾燥させます。

この時にブランクに錘を付けて、ブランクをまっすぐにするという人がいます。

バインディングが終わったブランクに錘を付けてブランクがまっすぐになるようにするのって、実は凄く難しいのです。

ブランクの中心に錘をねじ込むなら錘の重心とブランクの重心は一致するとは思いますが、単に錘をぶら下げただけでは、ブランクと錘の重心は一致せず、変な方向にストレスを掛けた状態で接着させているだけになるのです。

錘は必要ありません。しっかり曲がりを取り除いたら、そっと乾燥させましょう。