VictorinoxのクラッシックSDというミニサイズのマルチツールのウッドカバーを作製し、SNS等で公開しているのですが、ある日、通常サイズのマルチツールのウッドカバーも作れますか?という問い合わせがございました。
作れると思うので、本体を送って欲しいと連絡するとすぐに本体が送られてきました。
カバーを外して確認すると、なんか複雑なんです。
どこがと言う訳ではないのですが、外径形状で基準となる部分がないのです。
通常は基準部からの各部寸法を計測して図面化していくのですが、基準にできそうな部分がありません。
最終的には本体の突起部分にカバーの凹部分をカシメて固定するので、凹となる座グリ穴部分を基準に計測して、図面化しテスト加工を行なってみました。
本体にカシメてみるも穴位置が合わず、失敗です。
2回目も穴位置が適合しません。
カバーを計測するのではなく、カバーの写真から計測してみようと、計測方法を変えてみました。
すると穴位置は大体あってきましたが、外形がうまく合いませんでした。
加工しては修正を繰り返すこと6回 やっとそこそこのものが加工できるようになったので、
テスト用の板材ではなく、花梨の板材で加工を行なってみました。
外形部分は完ぺきではないので、加工後に手加工で修正を加えながら加工していきました。
外径形状が決まればコーナーのR加工を行ないます。
その後ペーパーで仕上げ、シーラント処理して、ウレタン塗布を行ないます。
最初の数回はウレタンを吸い込む部分、そうでない部分とがあり、細かな凹凸ができます。
そこを気にせず、何度も重ね塗りを行い、水研ぎをして凹凸を均す。
この作業を何度となく繰り返し、細かな凹凸が無くなるまで、コーティングしては水研ぎを繰り返し、仕上げます。
最終的にはコーティングして、水研ぎした後、徐々に細かなコンパウンドで仕上げ磨きを行ないます。
この作業を2週間程度繰り返して、納得のいく表面を得ることができました。
このVictorinoxは表と裏とでカバー形状が異なるのも手の掛かる一因でした。
裏面はコルク抜き部分の収納のため、一部がえぐれた形状になっており、共用パーツにできないのです。
兎に角1セット分は何とか加工できましたが、共用パーツではないので効率が悪いです。
それでも満足のいく加工が出来たので、依頼者に写真を送付したらたいそう喜んでいただけました。
ピンセットや爪楊枝も斜めに収納されるようになっていますし、位置決め穴も本体が大きいため片側3つになっています。基準穴2つの場合はピッチさえ合っていれば何とか嵌合できるのですが、基準穴3つの場合はピッチと角度が正確に一致しないと嵌合できないので、計測精度が要求されます。
Xictorinoxnマルチツールは色んな種類が存在するので、都度設計が必要になるかもしれませんが、時間を掛けて丁寧に製作すれば素晴らしい唯一無二の幾何学模様の花梨バージョンのマルチツールを手に入れることも可能です。
加工費用は、本体別で6000円としております。
ご興味があれば是非ご連絡ください。