Bill Ballan 44リールの修理依頼がありました。
オーナーは玄関先でこのリールを落とし、リールフットが曲がってしまったとのことで、ペンチでフット部分を修正して使用していたらしいのですが、リールを見る度に心が痛んでいたとのことでした。
全く同じ形状でリールフットを作ることは出来ないため、その辺は了承いただき加工を行ないました。
到着したリールはフット部分はやはり痛々しい感じです。
また、ハンドルを回した際のクリック音もほとんど聞こえないぐらいになっていました。
まずはリールフット部分の採寸です。
フレームに取り付けるネジピッチは19mmです。
また、ネジはUNC No2-56で、約2.1mm7のネジ外径です。
インチネジ用のタップとダイスは中々手に入りづらく、ネジ自体も入手困難なため、メートルネジで加工することにしました。
純正ネジの外径サイスやねじ高さ等を計測して、手持ちのM2.5ネジを加工して純正ネジのネジ頭形状に加工しました。
このような地道な作業に案外時間がかかったりするものなのです。
リールフット自体はMedalistのリールフットと外径形状は同じで、ネジピッチを19mmに変更すれば対応できそうなので、Medalist リールフット加工時に1個だけBill Ballan用に加工することにしました。
以前から何度かブログにも書いていますが、私が加工するリールフットはリンゴ割り方式を採用しており、パイプ状に加工したものを3分割してリールフット3個を加工するような加工方法にしています。
なので、Medalist用のリールフット2個とBill Ballan用リールフット1個を加工いたしました。
特に加工に関しては難しいところはなく、ネジピッチを変更した加工プログラムを作成すれば加工可能でした。
ピラーはBuddyリール用にピラーの両端を少し加工することで流用可能であることが判ったので、簡単加工で対応できました。
リンゴ割り加工したリールフットは、ツールマークを研磨して除去し、後は光沢が出るように研磨を行ないます。
これも特段変わった作業ではなく、粛々と作業を進めました。
クリック部分に関しては、分解してみたところ、クリック用のバネがクリッカーに対して遊びがある状態だったので、バネを少し塑性変形させて、クリッカーに密着するように調整したところ、いい音をさせて回転することが確認できました。
リールフットをリールのフレームに合わせてみると、幅もネジ位置もばっちりです。
M2.5のネジ形状も純正ネジとそん色なく、綺麗に取り付けることが出来ました。
ということで、胸が痛んでいたリールフットは見事に生まれ変わりました。
純正とは異なる形状ではありますが、まるで純正のように奇麗にフィットしています。
クリックも復活し、無事に退院することが出来ました。
オーナーさんからも、純正より綺麗とのコメントを頂きました。
解禁した河川も多く、皆さん気もそぞろ状態だと思いますが、
ひっそりと眠っているコレクションリールの中に心を痛めたリールがあれば、その胸の痛みを取り除くことができるかもしれません。
何なりとご相談ください。