ダイナキングバイス用のネジが欠けてしまったとのことで修理依頼がありました。
作り直すならば真鍮で加工して欲しいとのこと。
欠けてしまったネジはM5の六角穴付きボルトにプラスチック製のカバーを嵌め込んでいるようです。
プラしチックなので、紫外線などによる経年劣化で破損することは考えられるので、メーカー側が対処すべき問題なのですが、数年レベルでは問題なく使用できると思うので、仕方ない事なのかもしれません。
さて、このプラスチック製カバー付きネジは先端部が一段細くなっているネジと、先端部に樹脂製の突起を嵌め込んでいる形状になっています。
このネジ形状を計測して、真鍮で作り直すことにします。
この程度の加工であれば、わざわざ加工プログラムを作成すること無く、マニュアルの旋盤で加工できます。
サクッと加工できそうだったので安価な見積もりをして、加工を進めました。
送料も出来るだけ安くするために定形外郵便120円で送付しています。
郵送完了後は他のリール修理に取り掛かっていました。
後日、連絡があり、ネジが1回転も入らないとのことでした。
そんなはずはないと思いながらも、入らないネジを送り付けて料金だけ振り込ませたとなれば、詐欺同然なので、再度ネジを返送していただき、対応することに。
返送されたネジはM5に加工しています。
元々のネジも同封頂いたので、早速確認します。
まず、M5のネジピッチは0.8mmです。
1回転もネジが入らないとのことだったので、実は院地ねじだったのかも!と考えて、インチネジの規格を確認すると外径は約4.8mm、ピッチ1.05mmとありました。
もし、インチネジなら1回転も入らなくても不思議ではありません。
反対にm5のナットをインチネジにねじ込もうとしても1回転も入らないはずです。
手元にはインチネジのナットがないので、m5のナットを元々のネジと加工したネジに入れてみました。
どちらも入ります。
やはりこの元々のネジはM5のネジだったのです。
では、なぜ1回転も入らなかったのか?
想像ですが、ネジ加工後の先端の1弾舗装kなった部分の加工や、樹脂を埋め込む部位のザクリ加工等でねじ山部分にバリができていて、そのバリを綺麗に除去できていない状態で発送したのが原因ではと考えました。
なぜなら、m5のナットをねじ込む際にすこし引っ掛かりを感じたためです。
原因は突き止められたと考えているのですが、この状態でネジを返送して、同じように入らなかったら信用がた落ちです。
今わかっている事実だけを考え合わせると、元々のネジはバイスに入るが私が加工したネジは入らないと言う事。
ならばと、この元々の六角穴付きボルトを使用して、真鍮で、プラスチックのカバーと同様の形状を作ればよいという結論にたどり着きました。
M5に加工したネジの、ネジ部分を取り除き、その部分の六角穴付きボルトを埋め込むような座グリ穴を加工して、元々のネジを接着固定するように加工します。
単に接着するだけでは接着剤の経年劣化でネジが剥離したらネジの役目を果たしません。
ですから、座グリ部分の底に六角穴付ボルトの六角穴に対応する部分に六角形の回転止めを形成して、接着剥離してもネジの回転に支障がないような形状に加工しなおしました。
これで問題なくネジ止めできるはずです。
見積額を大幅に超えた加工になってしまいましたが仕方ありません。