私のような弱小メーカーは、常に自転車操業で依頼品の加工や、修理等で日々の仕事は一杯一杯なのが実情です。
時間が空けば、バンブーロッドであったり、リールの加工を行なっております。
従いまして、新たな商品開発が疎かになりがちになってしまうのです。
私な前職で研究開発部門に在籍していたため、常に何か新しいアイデアを考えるのが結構なウエイトを占めていました。
何か新しいアイデアを着想すると、それを検証し、特許明細書を作成することも業務でしたので、常に周りと同じ目線で物事を見ないように心掛けていて、俯瞰で見るというか、変わった角度から物事を見るのが癖になってしまっています。
自分が不便に思う事はアイデア着想の第1段階なので、この不便に思うことを大切にしています。
不便に思うことを解決することこそがアイデアであり、発明に繋がるのです。
例えば、スタッカーですが、以前にSHOPからヘアースタッカーって加工できませんか?と聞かれたことがあり、自分なりにスタッカーについて調べました。
まず、形状に関しては金属むき出しのモノか、革を巻き付けたようなものがありました。
私は、花梨が好きなので、金属の外側を花梨材で構成したスタッカーにしたいと考えました。
一度試作してみようと思い、自身の持つスタッカーを参考に加工してみました。
内径10mmのスタッカーを加工してみました。
実際に使用してみて感じたことは、φ10mmは少し大きいように思ったのです。
また、スタッカーの価格帯を色々調べてみると結構安価であるけれど、1度購入したら一生使えるような感じがして、なかなか買い替えることはしない商品であることにも気が付きました。
普通のスタッカーでは購入意欲はそんなに湧いてこない。
では、どうしたらいいか?
この購入意欲を判接アイデアこそが、現状の課題であり、この課題を解決することで新たな商品が生まれると思いました。
φ10mmでは少し大きいように思ったパイプ径だったので、2重構造にすれば、大きいようのパイプ、小さい用のパイプの両方が使用できる。
この構造は他のメーカーで以前からありました。
ならばどうして差別化していくか?
花梨の外側構造で、綺麗なスタッカーを目指していたので、パイプも研磨して、一見2重構造には見えないような構造で、実は2重構造にすることで少しの驚きと、加工精度の高さをアピールできるのではないかと考えました。
図面を引いて、加工してみましたが、2重構造部分が上手くフィットしませんでした。
加工と修正を繰り返し、滑らかなパイプフレア部分で2重構造のパイプが自然につながる形状を作り上げることが出来ました。
このような感じで、不便や、気になるところを少し改善する気持ちから、新たな構造物へと少しずつ進化して、W-スタッカーは完成しました。
フライフィッシングで不便に感じることは、次の飯のタネになるのかもしれません。
そのアイデアに種はフライマンに平等に落ちてきているはずなのです。
その種に、気付のか、気付かずに通り過ぎるのか、
それは、常日頃のアンテナの張り方次第なのかもしれません。
種に気づいても、具現化できないジレンマもありますが、これからも何か面白いモノづくりをしていきたいと思っています。
スタッカーは一生ものです。
一生のお付き合いが出来れば嬉しいですね!