リールの修理依頼がありました。
巻き方向を変更したいが、クリックが弱いので調整して欲しいというものでした。
送られてきたリールは最近よく見かけるレイズドピラータイプのリールで多分大陸製で各メーカーにOEM供給されているものだと思います。
形状は同じでプレートのロゴだけが異なるリールも見かけます。
写真ではメーカーのロゴはモザイク処理させていただきました。
クリックに関しては、バネを塑性変形させればいくらでも調整できるので、自分で調整できそうなものなんですが、なんでだろうと思いながら到着を待ちました。
両軸リールの場合は、ハンドルを固定しているセンターネジとピラー部分とリールフットのネジと取り外せば分解できます。
取り敢えずクリッカーを固定しているネジ1個とバネを固定しているネジ2個を取り外してバネを塑性変形させて再度取り付けようとすると、バネ固定用のネジ2個が空回りしているのです。
どうやらバネを調整してもネジが空回りしてバネの締結力が弱く、スプールの回転時にバネも動くことによって弱いクリック音しかしなかったようです。
ネジサイズは計3個のネジともM2で、真鍮製のネジです。
手持ちのM2のネジを取り付けてみると問題なく固定できますがネジ頭形状が全然異なります。
上手く固定できないバネ固定用のネジの外径を計測すると1.68mmと1.7mmでした。
クリッカー固定用のネジの外径は1.82mmでした。
通常のM2ネジの外径は1.9mm程度ですが、このバネ固定用のネジの外径は有効径1.74mmよりも小さいのです。
これでは空回りして上手くバネを固定することは出来ません。
と言うことで、これらの3個のネジを作り直すべく、形状測定して加工しなおしました。
ネジはC7941(快削洋白)で作製したので、シルバーですが、ネジの変更だけなのであまり変わり映えはしません。
しっかりとバネをM2のネジで固定したのでスプールを載せて回転させてみると小気味よいクリック音が復活しておりました。
余談ですが、フレームに対して黒い樹脂製(?)のプレートを接着しているのですが、樹脂製のプレートに接着剤をグルッと1周回転させて塗布してフレームと接着しておりました。
確かに穴の開いていない領域にピンポイントに接着剤を置いていくのは面倒かもしれませんが、1周ぐるりと接着剤を塗布しているので、穴の開いているところから接着剤の塗布状態が丸わかりなのです。
この接着剤を見てユーザーは、「効率的な仕事をしている。関心感心」とは思わないでしょう。
私が感じた正直な気持ちとしては、「安価なリールは安価な作り方してるなあ」です。
素晴らしい機能は目立つように見せつければよいと思いますが、ネガティブなプロセスは、見せないようにしたほうがいいと思います。
この穴加工自体を無くしても良いのではないかと思います。重量はそんなに大きく影響する程ではないと思いますし、何よりも良い気分のしない部分はヒトの目に触れないようにすべきなのではと思うのですが........。
ネジに関しては、「たかがネジ、されどネジ」
この1個のネジが上手く機能しないだけで、リールとして機能しないのです。
このネジを見ただけで、メーカーの姿勢が見えてしまったような気がします。
安価なリールだから許させることではありません。
品質管理あっての安価なリールでなければなりません。
私は良くこのブログで、「私の作製するリールは高価です。でも高価には理由があります」と言っています。
「このメーカーのリールは安価です。でも安価には理由があります」
これではフライマンは離れて行ってしまいます。
あまり否定的なことはSNSでは発信しないように心掛けていますが、このブログと言った閉鎖空間では、思ったことを書くべきだとも思っています。
書くことによって、ネット検索で抽出され、解決策へと導けると思っているからです。
「でもこの場合メーカー名、モデル名等を記載しないと検索に引っかからないのですが、悩ましいところです」
ネジの加工も可能です。
同様の不満や故障を経験している方々の力になれればと思っております。