A.T.H(アリハート)リール Lake Taupo F3の巻き方向変更に依頼がありました。
実は、以前に巻き方向変更できませんか?との相談を受けたのですが、ワンウェイクラッチが圧入されたパーツからワンウェイクラッチを抜き取るときに、挿入側とは反対側から加圧して抜き取るのですが、ワンウェイクラッチの外径部分を加圧するスペースがなくて、このモデルは巻き方向を変更できませんと言うのがネット情報から得られました。
また、以前にA.T.HのPolo Orbigo F2の巻き方向変更依頼で現物確認した際も同様にワンウェイクラッチの外径を加圧するスペースがなく、変更できませんとして、送り返した経緯もあり、Lake Taupo F3についても一度は変更できませんと回答したのでした。
それから、月日は流れ、私も色んなリール修理をこなしてきました。
ある日、ワンウェイクラッチの外径を加圧するスペースがないのであれば、加圧するスペースを確保するためにパーツの一部を加工すれば、ワンウェイクラッチの外径を加圧できるのでは?と思いついたのです。
んでもって、今回の修理依頼に関しては、こちらからお声かけさせていただき、修理することになったのです。
リールを受け取り、持ち帰ってワンウェイクラッチが収まっているパーツを確認すると、このままでももしかすればワンウェイクラッチの外径部を加圧できるのではないかと思い、必要な治具を加工して、ワンウェイクラッチをバイスに挟んで加圧してみたのです。
通常であれば圧入されたワンウェイクラッチが外れる際には、バキッと言う音と共にワンウェイクラッチが動き始めるのですが、今回は何か様子が違います。少し違和感を感じながらもバイスに力をこめるとニュルッとした感触と共に治具がワンウェイクラッチにめり込んだのです。
そうです、ワンウェイクラッチの外径を加圧できていたと思っていたのですが、治具がワンウェイクラッチの内径側にめり込んで、ワンウェイクラッチを破壊していたのです。
瞬時に嫌な汗が吹き出します。
恐る恐る破損したベアリングの内部パーツをピンセットで摘まみだしました。
それがこの写真です。
修理を引き受けなればよかったとか、もっと状況を確認してから作業すればよかった等々色んな思いが駆け巡りますが、状況が好転することなどありえません。
パーツを旋盤に取り付けて加圧スペースを確保して、壊れてしまってワンウェイクラッチを何とか抜き取りました。
まだ、動悸は収まりません。(バクバク)
私もかつて、ワンウェイクラッチを利用したリール構造を考えたことがあり、その際にワンウェイクラッチを少し調べたことがあり、抜き取ったワンウェイクラッチの型番を読み取り、同じワンウェイクラッチをすぐに注文したのです。
ここに忘備録として記しておきます。
Lake Taupo F3のワンウェイクラッチはHFL0822と言う型番で、これよりも大きなA.T.HリールではHFL1022と言う型番のワンウェイクラッチが使用されています。
0822は内径8mmで外径10mm長さ22mmのワンウェイクラッチです。
数日後に到着したワンウェイクラッチの方向をよく確認して、ワンウェイクラッチは冷凍庫で冷やし、パーツは加熱して圧入するとすんなりとワンウェイクラッチを圧入することが出来ました。
嫌な汗から数日後、何とかリカバーできたのです。
リールを組み立てて、右巻きから左巻きに変更でき、カリカリと小気味よいクリック音と反転時のブレーキの感触を確認して、やっと安心したのでした。
しかしながら、壊してしまったワンウェイクラッチは自腹を切るしかありません。(そんなに高価なパーツでもありませんが.......。)
作業内容的にはそれほど難しいわけではありませんが、リールの純正パーツを加工するのは、なかなか勇気のいる作業なのです。
ワンウェイクラッチを壊してしまった後、私は即座にこの純正パーツの採寸を行ない、最悪はこのパーツごと作り直すことでリカバーしようと考えておりましたが、何とかそこまでしなくとも復活できたので良かったです。
転んでもただでは起きない性格です。
この純正パーツの採寸データがあるのと、ワンウェイクラッチの型番が判っているので、A.T.Hリールの巻き方向変更パーツを作製するのも面白いかもなどと考えたりもしたのです。
需要があればの話なんですけどね!
それにしても、久しぶりに嫌な汗をかきました。