HARDY Uniqua 2 5/8の修理依頼がありました。
ご覧の通りテレホンラッチのアンティークなリールですが、スプールの表面が割れています。
オーナーさんは、「見た目はどうなっても使えるように直してほしい」
とのことでした。
取り敢えず割れた部分を合わせて、マスキングテープで固定してみました。
きっちりと合わせてみましたが、スプールを回転させるとフレームに干渉するようです。
割れた部分を接着剤等で貼り合せた形跡があり、その接着剤が破断面に微妙に残っており、合わせがきっちりと密着しないためだと思います。
さて、どのように修理を行うべきか?
まずはテレホンラッチとノブを取り外しました。
割れた部分のみを接着しても強度的に問題があります。接着幅が狭く、接着長さが長いためです。
一番良いのは割れた部分の裏面側で補強できれば良いのですが、裏面側はRが付いており、このRに合わせたプレートを作製するのが難しく、また、分割しない限りは裏面側に貼り付けることが出来ません。
補強するとすればスプール表面にしか細工は出来ないのです。
ユニーカのスプール表面は中心付近のテレホンラッチ部分と、外周部分とでは高さが異なる段差形状になっています。
また、テレホンラッチがあるのでその可動領域には補強できないことが判ります。
外周部分にはノブがありますので、ノブ部分にも配慮が必要です。
ということで、円盤状の薄いプレートを作製し、ラッチ付近用と外周用の2種類を作製し貼り付けて補強することにしました。
各部サイズを採寸して、プレートを作製しました。
切断後、バリ取りして、少し研磨して貼り付けるようにします。
外周側のプレートにはノブ部分に穴加工し、ノブに関しても作り直しを行ないました。
内側の小さなプレートはラッチを動作しても干渉しない位置であることを確認して接着いたしました。
2枚のプレートをスプール表面に張り付得ることで補強しました。
接着後、案の定フレームと干渉して上手くスプールが回転しません。
スプールの外周を旋盤に固定して干渉しないようになるまで切削加工しました。
見た目に関しては元々のUniquaとは大きく異なっています。
これに関しいては賛否があることは重々承知していますが、この方式以外で補修する手段を思いつかず、この修理方法に至りました。
割れたリールをそのままにして、使わずに引き出しの奥にしまっておくのか?、
何としてでも修理して現役で使い続けるのか?
これはオーナーの方の意思次第ではありますが、愛着をもって修理して思い出を繋げていく行為に頭が下がります。
こういった思いを何とか形にしていくお手伝いが出来て良かったと感じています。
壊れたら新しいものを買う。
壊れたから捨てる。
今の世の中の流れですが、壊れても修理してずっと使う。
そのためには最初にモノを買う時点で自分のお気に入りをしっかりと品定めして買うことが必要だと思います。
「買いたい理由が値段ならやめておけ、買わない理由が値段なら買っておけ」
この言葉の理由が良くわかる出来事でした。