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商品開発の目線

無から有を生み出す商品開発は結果を見た後では簡単そうに思えます。

正にコロンブスの卵です。

商品開発する上で、コンセプトは重要で、商品で何を一番アピールしたいのか!これが重要なのです。

 

1例として、フロータントケースで説明いたします。

SNSで広がったフッ素グリースを手に入れて、渓流で試してみたんです。

グリース自体は非常に良くて、気に入ったんですが、なんせ自転車用なので、携帯性など考えていないのは当たり前。

 

具体的にはフライにフロータント処理をする場合は、ロッドを小脇に抱えて、フライを指先で摘まんだ状態でフッ素グリースをベストから取り出し、

両手で蓋を開けて、少量のグリースを指先に取り、フライに揉み込んで、両手で蓋を閉め、ベストに戻す。

と言う作業が必要なのです。

両手で蓋を開ける時に蓋を落としたら、本体を落として、流れに消えてしまったら....。

 

蓋や本体を落とさない形状ってどんな形状にすればよいか?

また、両手で開閉するのは煩わしいので片手で出来ないか!

グリースが漏れ出さない工夫が必要

などの課題が見えてくるんです。

 

フロータントケースは落下防止対策され、ワンハンドオペレーションできる形状にして、そのために、ヒンジ構造と磁力による密着性を利用し、Oリングを介在させ、液漏れ対策を行なう。

これがコンセプトです。

課題を洗い出して、その課題を1つづつ潰していくこと自体がコンセプトになっていきます。

 

これはまさに特許出願アイデア出しに似ています。

今までどんな課題があり、その課題を解決するための手段をみつけて、それを解決するとどんなメリットが出てくるのか?

これこそ特許出願のプロセスなのです。

 

フロータントケースは課題を解決できた成功例と言えるでしょう。

これは、ユーザー目線で商品開発できた良い事例だと思っています。

 

 

さて、良い事例など読みたくない、失敗事例を見たいんだと思う方もいるかもしれません。

 

写真は加工途中段階のマグネットリリーサーです。

左のマグネットには中心部分にシャフトがあり、シャフト先端部には切り欠き部分があります。

続いて右のマグネットにはボディー中心付近にボタン状のレバーが見えます。

双方のマグネットを密着させるとシャフトの切り欠き部にロック機構が働き、マグネットが外れません。

ボタン状のレバーを押すことでロックが解除され、マグネットリリーサーが分離できる構造になっております。

この小さなボディーの中にロック機構を組み込んで、実際に加工して組み上げ、予想通りにロック、アンロックが出来た時は、声が出るほどにやけたものです。

渓流では藪漕ぎも日常で、マグネットリリーサーで繋がれたリリースネットは枝にネットが引っ掛かってマグネットが外れることも少なくありません。

そのためリーシュコードを併用して、マグネットが外れてもベストとネットが繋がれているため、紛失を防ぐことができるのです。

 

ロック機構付きのマグネットリリーサーを

ベストの背中部分に取り付けてみて、ハタと思ったのです。

釣りの途中でマグネットリリーサーをアンロックするときと言うのは渓魚が釣れた時です。

当然片手にはロッドを握りしめている状態です。

他方の手1本でマグネットリリーサーをアンロックして取り外すことができるのだろうか?

アンロックでジタバタしている間にばらしてしまったら元も子もありません。

それだったらリーシュコード付きの通常のマグネットリリーサーでいいんじゃねーの?と思ってしまったのです。

 

慣れれば片手で外せないことはないかもしれませんが、今の私は五十肩の痛みにより手を背中側に回すなど痛みでできるはずもございません。

技術的には中々良いセンスなのですが、用途とマッチしていないわけなのです。

 

技術優先での開発であって、使用シーンが見えていなかった典型的な例だと言えます。

ユーザー目線からのスタートであれば、この矛盾に早々に気が付いていたことでしょう。

 

但し、ロック機構をリリースネットのグリップ部分に仕込むと、ネットを取り外す際にネットのグリップ部分を握って取り外すので、グリップを握ることでロック解除できる構成にすれば十分に成り立つ構成にできるのです。

どなたか、ネット職人の方とコラボできれば面白いと思うんですねどね!

 

商品開発はユーザー目線で、現状の課題抽出と課題解決のアイデア抽出が必要と言うお話でした。