
HARDY St.Georgeのスプールの割れ修理依頼がありました。
確認してみると、ノブ取り付け部のスプールの一部が割れて欠けています。
また、スプールの欠けた周囲は変形してしまっています。
ノブを元通りにスプールに合わせてみるも、大きく変形しているため、接着などで何とかなるレベルではありません。
取り敢えず、各パーツを洗浄して考えましたが、割れたスプール部分にプレートを貼り付けて、そのプレートにノブを取り付けえるようにしようと考えました。
(いつものパターンと言われればそれまでですが......。)
このノブはネジ固定後に裏面からカシメられているようで、ノブの再生も難しいようで、プレートと、メタルコア、ザブトン、ノブ、スリワリネジの5点を加工することにしました。
スプール径や、厚み等を計測し、スプールと同じ径でラウンドした形状のプレートを設計し、加工していきます。
アルミの鋳造で加工されているリールなので、プレートもアルミで加工することにします。
プレート厚は2mmにしようと思いますが、2mm厚の材料がありません。
2.5mmのアルミプレートを切り出して、0.5mm面加工して2mmの板材にして、プレートに加工していきます。
また、プレートをスプールにネジ固定で取り付けるのですが、ネジ位置はパフォレーション位置をかわすように配置する必要もあり、簡単なスプールの絵を描いて、ネジ位置を確認し、プレートに設計を行ないました。

スプールには細かな段差等があるので、段差に掛からないような形状にして設計しています。プレートを固定するネジ部分はパフォレーションの穴間中心に配置する設計にして、最終的にはM2mmの皿ネジ固定を考えていたので、プレートにはまず1.6mmのドリルで穴加工を行ない、そのプレートをスプールに当てがって、プレートのドリル穴をガイドに1.6mmのドリルでスプール側に穴加工を行ない、続いてタップ加工を行ないました。
プレートはφ2.1mmのドリルで穴径を拡大し、C面取り加工して皿ネジが収まるようにしています。
プレート中心部分にノブを取り付けるネジ加工を行なえば、あとは通常のノブ交換と同様に加工を行なていくだけです。
また、このSt.Georgeは1950年代のもので、リールフットがガタついていました。
リールフットは本体にカシメられている状態なのですが、70年の時を経て、グラつきが大きくなったようです。
これも一緒に修理するため、カシメを取り除いて、タップ加工して、リールフットのカシメが収まっている部分に合うようなネジを加工してネジ止めしました。
と言うことで、再起不能化と思われたSt.Georgeは少し形を変えたものの、しっかりと現役復帰することが出来ました。
この形状には賛否両論あろうかと思います。
オリジナルとは程遠いのは百も承知です。
ですが、そのまま修理せずにそのリールとしての役目を終えてしまうのか、それとも何とか修理して、今からも歴史の続きをまた刻んでいくのか、どちらがリールとしては嬉しいでしょうか?
また、どちらがフライマンとして嬉しいでしょうか?
イギリス生まれのこのリール、イギリスと言えば壊れたらバックヤードで修理して使い続ける文化の国です。
安価で買えるリールは山ほどありますが、その安価で大量生産されたリールであなたは満たされますか?
趣味の世界なんですから、わがままであっていいんです。自分のわがままの限りを尽くして、満足感を得られればそれでよいのだと思います。
仕事世界ではなく、趣味の世界なんですからもっとまじめに楽しみましょう。